スライダー・アニメは使える?JavaScriptで崩れる表示速度の対処法

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美しく動くWebサイト、ビジュアル訴求の強いスライダー、スクロールと連動した演出。こうした「体験価値」を高める演出は、ブランドや世界観を伝えるうえで重要な武器です。しかしそれらは、ページスピードインサイト(PageSpeed Insights)で「足を引っ張る存在」にもなりかねません。

今回、JavaScriptの表現力と表示速度の両立というテーマに向き合い、TBT(Total Blocking Time)やLCP(Largest Contentful Paint)に与える影響、そして「使っていいのか?」という判断基準を整理します。

JavaScriptが表示速度に与える影響

JavaScriptは、Webにインタラクションや演出を加えるために不可欠な存在ですが、読み込み・描画・操作性の3点で悪影響を与える可能性があります。代表的な影響は以下のとおりです。

  1. TBT(合計ブロック時間)の悪化
    JavaScriptの読み込みや処理に時間がかかると、ユーザーの操作(タップ・スクロールなど)に対する応答が遅れます。TBTは、ユーザーが「すぐに使える」と感じられるかどうかの体感指標です。
  2. LCP(最大コンテンツ表示時間)の遅延
    JavaScriptがメイン画像やコンテンツの描画に干渉すると、LCPが遅くなります。これは表示速度スコアに直接影響します。
  3. CLS(レイアウトのズレ)を引き起こすことも
    JavaScriptで後からDOMを動かすと、ユーザーが見ている間に要素がズレて見づらくなります。これは視認性や操作性を損ねる問題です。

よくある「重たいJavaScript表現」とその影響

要素表現の目的主な悪影響改善の余地
スライダー写真・商品・世界観の訴求LCP・TBTの悪化初期表示のみ即読み、2枚目以降はlazy-load
フェード・ズーム演出高級感や動きの演出TBT・CLSに影響CSSアニメーションへの置き換え
スクロール連動アニメストーリーテリング効果JS依存・CLS誘発最小構成、Viewport外は無効化
ハンバーガーメニューモバイルUXの強化DOM操作遅延軽量JSまたはCSSトグルで実装

重たいJavaScriptと「どう付き合うか」

ライブラリを増やしすぎない
GSAP、jQuery、ScrollTrigger、Swiperなどを並行使用しているケースは少なくありません。しかし機能が重複していたり、不要な部分をすべて読み込んでいたりすることが多いため、まずは「削れるかどうか」の見直しが第一歩です。
遅延読み込みを徹底する
JavaScriptの読み込みにはdefer属性 またはasync属性を使うことで、HTMLの解析を妨げないようにできます。さらに、ページの下部で使うJavaScriptはIntersection Observerなどを使って動的に読み込むのが理想です。
CSSアニメーションに置き換える
多くの動きは、JavaScriptでなくともCSSのtransitionやanimationで再現可能です。特にtransformやopacityはパフォーマンス的にも安全です。TBTやCLSへの影響を最小限に抑えたい場合、CSSによる演出への移行が効果的です。
スライダーは「最初の1枚を即表示」
スライダーを完全に禁止する必要はありません。重要なのは「最初の1枚だけLCPの対象になるよう即表示し、それ以外は遅延読み込みする」構成です。これによりブランド表現と速度のバランスを保てます。

JavaScriptは「使ってはいけない」のか?

結論として、JavaScriptは必要です。ただし「何も考えずに使う」ことが問題なのです。

Webサイトにとって、ブランドの世界観や訴求力は速度と同じくらい大切です。その両方を成立させるには、「どこまで使い、どこで抑えるか」の線引きが必要です。

JavaScript使用のポイント

  • JavaScriptによるリッチ表現は、TBTやLCPに悪影響を与える可能性がある。
  • ただし、それを理由に全面否定する必要はない。
  • 最小限・遅延・CSS代替などの工夫によって、十分に表示速度と表現力を両立できる。
  • スライダーやアニメーションは「付き合い方」が鍵。
西部俊宏
執筆者:西部俊宏
株式会社Webの間代表取締役。上場企業でのSEOやWebサイト構築実績多数。ECサイトのカスタマイズ経験も多数あり。
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